NORTH 北海道地域ネットワーク協議会

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NORTH 北海道地域ネットワーク協議会~北海道をもっとゆたかに~

 
ICTふるさと元気事業とは?!

~地域の元気、安全・安心を応援するモデル構築事業~

総務省では、ICTの利活用を通じて地域経済の活性化や少子高齢化など地域が抱える課題の解決を促進するモデル的な取り組みを自治体等の事業への委託事業「地域ICT利活用モデル構築事業」を実施してきた。本会では、本事業を更に展開させるべく『ICTふるさと元気事業』(正式には、平成21年度情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金事業という)の採択を得、医療機関相互情報連携、周産期医療支援、在宅医療支援、ビジュアルコミュニケーション支援、そしてバイタルモニターシステムの5コンポーネントをフレームワークとして有機的に結合し、地域特性に合わせた事業展開を継続している。ちなみに「周産期医療支援システム」は、妊婦さんと赤ちゃんの安心・安全に加え、妊娠から出産まで合計約16万円の交通費を含む費用軽減効果※も実証されており、先進的な遠隔地域医療連携モデルとして注目されている。

※「地域ICT利活用モデル構築事業実施地域における効果検証等に関わる調査」(総務省)

奥尻島とは? ?自然と海の幸に恵まれた北海道最西端の島?
奥尻島は、日本海に浮かぶ北海道南西部の島。島の71%は山林。その6割が保水力の高いブナの原生林のため、道内の離島では唯一稲作が行われている。複雑で変化に富んだ海岸線はウニやアワビをはじめ新鮮な魚介類の宝庫。美しい自然と相まって観光地としても知られている。平成5年7月12日に発生した「北海道南西沖地震」では震度6の烈震、30m近い津波を受け、260人を超える人命が失われるなど大きな被害を受けた。島では全国から寄せられた義援金等を基に災害復興基金を設立、道路の改良、避難場所や防災安全施設の設置など防災・安全に配慮した整備を行い、現在では落ち着いた佇まいを取り戻している。
  • 面積/142.98平方キロメートル(北海道内離島では利尻島に次ぐ2番目に大きな島。全国では14番目)
  • 人口/3640人・1700世帯(平成19年1月末現在。昭和35年のピーク時に比べ50%以上も減少)
  • 主な産業/水産業、観光
  • 島名の由来/アイヌ語の「イクシュン・シリ」、その後「イク・シリ」と訛ったもの。「イク」は「向こう」、「シリ」は「島」で、「向こうの島」の意味
  • 奥尻町ホームページ
    http://www.town.okushiri.lg.jp/

奥尻島に見る 「周産期医療支援システム」の現状

妊婦健診も出産も島では不可能 海を越えていた妊婦さんにもたらされた福音

奥尻島から望む北海道
奥尻島から望む北海道
なべつる岩
なべつる岩
 函館空港から36席の小さな飛行機、”SAAB340”で約30分、空から見る奥尻島はなだらかに続く稜線に緑の影が濃い、美しい島である。人口約3600人、島民のほとんどは昔からの島人。レンタカーの受け渡しにも「キーを付けて奥尻空港に置いとくからさぁ。」と、のどかで穏やかな島の暮らしの一端が伺える。複雑に入り組んだ海岸線にモダンアートを思わす奇岩が彩りを添える東側の海岸からは、晴れた日には対岸の北海道本道がくっきりと見える。部外者なら「こんなに近い」と無邪気に喜べる風景だが、奥尻島の妊婦さんにとってその距離はきわめて遠い。妊娠初期から病院に受診し、病院で赤ちゃんを産むという現代では当たり前のことを、「海」が阻んでいるからである。

 産婦人科医の不足は全国的な課題だが、北海道はとりわけ深刻で、1996年から2006年の10年間に439人から359人と18.2%も減少。人口10万人当たりの産婦人科医師数は全国平均を大きく下回っている。まして海を隔てた島となれば状況はさらに悪く、奥尻島では産婦人科専門医はゼロ、それどころかフェリーが通う対岸の江差にも分娩できる病院はない。初診から分娩までの6~8カ月もの間、妊婦さんはフェリーや飛行機に揺られるリスクを侵し、幾度も海を越えなければならなかったのである。

 医療技術が進歩したとはいっても、妊娠中にはいつ何が起こるかわからない。例えば、赤ちゃんも母体も危険な切迫早産・流産である。

 「そんなときは、ヘリコプターで市立函館中央病院まで運ぶしか手はありません。年に何回かは、切迫早産の疑いのある妊婦さんを運ぶお手伝いをしてきました。その時はいつも頑張れよと心から思いましたね」

奥尻町国民健康保険病院 前田看護師長
奥尻町国民健康保険病院 前田看護師長
 奥尻消防署の署員の一人は、こう語る。島で唯一の医療施設、奥尻町国民健康保険病院の看護師長・前田裕子さんは、自身でも2人の子どもをもつお母さん。こうした島の状況を憂いてきた一人だ。

 「私の時代までは分娩施設もあったし、助産師さんもいましたから、妊婦さんはみんな奥尻で出産できました。10年前は札幌医大から月1回、医師が来てくれていたのですが、島の人口が減るにつれてだんだんと減って…。元気な妊婦さんでも妊娠中は不安なもの。何とかならないかなとずっと思っていました」

 こうした産婦人科医療過疎に明るい兆しが見えたのは、平成20年2月のこと。北海道の離島としては初めて、「周産期医療支援システム」による『遠隔妊産婦健診』が実施されたのである。
 

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